第1レーン*憧れのフォーム

21/89
前へ
/508ページ
次へ
その話が本当であれば、今朝走っていた人物は恐らく陸上競技部員。 明日の部活紹介で会えるかもしれない。 「陸上競技部、かぁ…」 「てか、陽凪走れるが?  中学で陸上やりよったとか?」 「ううん、中学の時は何もしてなかったから。  イマイチ部活って言われてもピンと来ないんだよね。」 中学時代は部活に所属せず、放課後は家まで寄り道しながら帰るのが日課であった。 通学路は舗装されていない山道で、季節ごとに咲く自然の草花と、時々顔を見せる野生の動物たちの住処が点在する風景。 幼い頃から歩き慣れたその道で、いつも暗くなるまで遊び回り、春には「イタドリ」、秋には「栗」を採取して、家に持ち帰って夕食のお供にした。 しかし、寮に入ってからの通学路は、キャンパス内と学生寮とを挟む小さな交差点のみ。 通学時間は10分足らずに短縮された。 これでは放課後の時間がかなり暇になる。 「やったら陸上競技部、見学したらええがやない?」 「見学?」 「てか、今昼前やし、まだその人グラウンドに居ったりして。」
/508ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加