第1レーン*憧れのフォーム

7/89
前へ
/508ページ
次へ
白砂の大地に、赤は物凄く映えた。 赤いのはジャージなのだろうか。 「……部活?  でも今日は入学式だから、新入生と寮の指導生以外は来てないはずだけど。」 すらりと高い背丈。 赤色のジャージを身に纏うと、一礼してスタート位置に立つ。 体勢を低く構え、一呼吸入れた。 左手の時計を構え、さらに姿勢を低く。 そして、勢い良くスタートを切り、円周を駆け抜けた。 遠心力とスタート直後の加速からなのか、カーブの外側で覗く陽凪へ砂煙が襲う。 シューズが土を蹴る音。 風に揺れる髪。 空気を切り裂くように突き進む赤色のジャージ。 前髪を分け、クロスに留めた金色のヘアピンが光り輝く。 鼻いっぱいに吸い込んだ砂煙に噎せながらも、陽凪はその走者を目で追っていた。 長い腕と足で力強く走る姿は、まるで風の中を駆ける豹のよう。 後半になるとスパートをかけ、一気に1周を走り終えた。 髪型的に女子だろうか? 右横に束ねて、ピンクのシュシュで留られている。
/508ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加