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エティア・ハーツはベッドからムクリと身体を起こすと苛立ったように前髪をかきあげ、大きく息を吐いた。
そして隣で眠る五月カンナの寝顔を見ると、そっと彼の顔に触れようとしたが、起こしてしまいそうだなと思い直し、彼に触れる前に指を止めた。
エティアは嫌な夢を見て目を覚ました。
闇の中にいたエティアがどんなに叫ぼうとしても声は出ず、手を伸ばして捕まえようとすると僅かに届かずカンナはどんどん遠ざかって行ってしまう。
必死に追いかけようとしても、なぜか足が動かない。
エティアに背を向けたまま、振り返ることなく、やがてカンナの姿は闇に溶けて見えなくなってしまった。
先の戦争でカンナが目の前で消えるという嫌な経験をしたエティアからすれば、この夢はその時の体験を彷彿とさせ、夢だと分かっていても最悪な気分にさせた。
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