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父親は元ゴッドイーターで、フェンリル極東支部第二部隊の隊員として活躍していたらしい。
だが、娘であるサイラが生まれてからは退役し、今まで守ってきた居住区の実家でひっそりと暮らしている。
そして今、わたくしは──
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「──どうして、こんなことを、しているので、しょうかっ!」
錆びて固くなったボルトを締めながら、稲鳴サイラは不満をぼたぼた垂らす。
「こら、文句を言いながら仕事をしないの。手抜かっちゃうでしょ」
その様子を窘めるのは、灰色の髪を短く切り、汚れが身体に着くのも厭わないようなタンクトップ姿の先輩であり教育担当者でもある楠リッカ。
「それに、入り立ての頃は大変だと思うけど慣れたら結構楽しいよ?」
そうかしら……神機の整備なんて汚れるし疲れるし爪は欠けるし、何より自分が戦場に出れるワケでもない。
やりがいを感じられるようになるとは、到底思えなかった。
本当は神機使いになりたかったのだ。父のように、誰かを守るような。だから履歴書や面接もマニュアルに載っていたのと同様にこなした。
結果はご覧の通り、
「銃口を整備するなら、まず神機のオラクル残量が空になっているか確認して。間違って暴発なんてしたら危ないよ」
「……分かりましたわ」
整備士として毎日仕事に励んでいる。と言っても、未だにオラクル侵喰に強い手袋には填め馴れしていないが。
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