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「由夜」
「どうした?」
弁当を鞄に入れて学校へと向かう途中、不意に綾に声をかけられた。
握っている綾の手の力が強くなるのを感じた。
「……その………キス、しないの?」
顔を赤くしながらもなにかを期待するような、なんとも縋るような感じで俺を見つめている。
「そういえばしてないな。したい?」
「べ、別に由夜がしたくないならいいけど…」
「ふ~ん、じゃあいいや」
最近何故だか綾にいじわるしたくなってしまう。
案の定綾はそう、と言って悲しそうな表情になってしまった。
「綾、したいならしたいって言えばいいんじゃないか、俺は素直な方が可愛いと思うしちゃんと口にしないとわからないよ?」
「い、いじわる…わかってるくせに。バカ………キス、しよ?」
一呼吸おくと甘えるような声が俺を刺激した。
朝の件があるわけではないが、こうしたことをコツコツやっていけば、より良い関係になれるかもしれない。
彼女を優しく引き寄せると鼻孔をくすぐる綾の香り。
別に俺だってキスするのが嫌なわけではない。
外だし軽く触れるだけのものだが唇を離すと微笑む綾が居た。
なんだ、このめっちゃ可愛い子は…。
「安心しろよ、俺は綾の事大好きだからさ」
「……うん。ありがとう、由夜」
俺の腕にしがみつくと体を擦り寄せてきた。
天沢と合流して見られたが、天沢は笑って俺達を見ていた。
つうかお似合いだぜ、とか言われてしまった。
なんだが天沢の野郎は結構前からこうなることを予想していた気がした。
今度天沢に聞いてみることにしよう。
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