第十六章・文化祭の前

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「そうなんだ。由ちゃんが楽しそうでよかったわ」 静恵さんと話していると犯したくなる。 こんなこと前まで思いもしなかったけど綾とそういう関係になって見れた一面もあるからかも。 最も静恵さん以外に抱いたことはない感情だから彼女が特別なのは間違いはない。 だからといってなにかするとかふざけた感情はない。 無いことだろうが、静恵さんが仮に万が一誘ってきても断るし。 「あいつも部活で忙しかったしたまにはというやつです」 「でもわざわざ待ち合わせる必要があるのかしら……一緒に住んでるのに」 「なんか家に用事でもあるんじゃないっすかね。うまうま」 こうして静かに二人っきりの食卓は久しぶりだ。 沙羅はまた居ない…機会があればちゃんと話して問題を片付けたいけど、彼女はきっと折り合いを自分でつけると思う。 実際俺を避けているから家にいないし静恵さんもそれに触れない。 だったら待つしかない。 「残念、今日は由ちゃんと買い物行こうと思ってたけど一人で行くことにするわ」 「それなら一緒に行きましょうよ。時間だっていっぱいありますし」 「それはどう考えてもおかしいでしょ。綾ちゃんにまた怒られるわよ?」 「なにいってんすか。俺も綾も静恵さんは大好きです。大体一緒に暮らしてる家族に遠慮なんかしてどうするんですか」 静恵さんには身内が居ない。 俺も綾も天沢だって知ってる。 そんな静恵さんに預けられている俺はもっと彼女を理解している。 静恵さんが事故で亡くした旦那さんの部屋を片付けないとか泣いているのだってみたことある。 こんなことで恩を返せるなんておこがましい考えはないけどできることなら家族として寂しさは埋めてあげたい。
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