ステップ4~紫芋って案外普通の芋だよな~

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親父とは顔を合わせずそのまま家を出た。 ヘルメットをかぶりバイクに跨り目を拭いた。 まひるちゃんが幸せになることを祈ろう。 なんだかまた悲しみがぶり返してきた。 「兄ぃー。」 エンジンをかけようとした時またそんな声が聞こえた。 まさかな……そう思ったとき足に違和感。 「まひるちゃん?」 足にしがみついていたのは肩幅が小さな女の子。 まひるちゃん以外いないよな。 別れの挨拶でもしにきたのかな。 「兄ぃ…まひるも帰る。」 「えっ……でも俺まひるちゃんに酷いこと言ったんだよ?」 「でもまひるのこと迎えにきてくれたんでしょ?」 顔を上げたときのまひるちゃんの顔はなんだか光で満ちていた。 辺りが暗いからだろうか。 「許してくれるの?」 「うん。そのかわりまひると一生一緒にいてね?」 「うん…約束する。」 「まひるとちゃんと合体してね?」 「うん…約束する。」 ヘルメット姿が幸いしてる。 いまとったら涙でぐしゃぐしゃだ。 「まひると今度結婚式してね?」 「ああ…するよ…なんでもするよ。」 俺はまひるちゃんを持ち上げて抱き締めた。 「ごめんまひるちゃん…。」 「うにゅー……兄ぃのパパー約束したよー。」 ん……待てよ…途中あたりからなんかおかしな約束がなかったか…。 まひるちゃんが合体とか結婚式とかわかっているのか。 そう思いまひるちゃんが声をあげた方を向くと親父が口元を吊り上げしたり顔で笑っている。 「まひるちゃん…ちょっと待っててね。」 「うん。待ってるね。」 俺はまひるちゃんを下ろしバイクから降りて本気のダッシュをしながら親父にドロップキックをかました。
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