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「月が綺麗だね。」
「雲に隠れてるけど?」
近くの公園について温かいお茶を飲みながらベンチに腰掛けている。
いやでもやはり月が綺麗だね、は基本的な入りだと思うんだがね。
「本当の目的はなによ?まさか私を食べる気じゃあ…。」
「無きにも有らずだよ。」
由佳ちゃんは一度まじまじと俺を見てからその気がないのを確認すると口を開いた。
「そんな気ないくせに……さっき言い忘れてたけど私今週末には出ていくわ。」
「なんでさ?」
そよかちゃんからある程度事情は聞いているため冷静でいられた。
「親が離婚して施設に行くことが決まったからよ。まっ私ならうまくやるわよ。」
そう言ってみせた笑いが作り笑いなのは明らかだ。
「由佳ちゃんはそれでいいの?」
「母親も父親も私が邪魔だから仕方ないわよ……それに真一郎にとってもいいじゃない…我が儘でうるさい私が消えて。」
自覚してたか…そろそろ耐えきれなくなった俺は由佳ちゃんを抱き上げ抱き締めた。
まひるちゃんに比べ胸板に当たる柔らかさにはかけるが、それでも幼女特有の肌の柔らかさはある。
「な、なによいきなり…今生の別れだからってそんな…。」
「由佳ちゃん…安心して…俺がいるから。由佳ちゃんがいないとまひるちゃんだってそよかちゃんだって悲しむよ。それに俺も悲しい。それと由佳ちゃんには俺やまひるちゃんやそよかちゃんがいるよ。」
「本当?」
由佳ちゃんと向かい合うと涙を流していた。今出た言葉もどうにか言えたと言う感じだろうか。
「ああ、本当だよ。明日の午後、俺が帰ってきたときに一緒に俺の親に会いに行こう。」
施設に行かないようにするには後見人がいればいいと思う。両親ならまひるちゃんのことといい俺がぐだぐだ考えるよりすぐに良い策を伝授してくれるはずだ。
「真一郎……ありがとっ。」
「どう致しまして…そろそろ冷えてきたし帰ろうか。」
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