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数十分ほどタクシーに揺られてようやく着いた。
無論タクシー代は俺が出した。
さすが小学校の運動会とだけあって人の数が凄まじい。
そりゃあそうか、1~6学年の親やら親族やらが一同に会するのだから。
みんながみんな生徒は体操服。なかには可愛い子もいたけれどまひるちゃんや由佳ちゃん、そよかちゃんと比べると興奮度とか愛でたい度がまるで違う。
「え~とまひるちゃん達のクラスは正門入って西の方だから…。」
「もう、違うよ。東だよ、だからあそこら辺に場所とればいいよ。」
地理に弱い俺は夕にフォローされながら場所取りに成功。
地図すらちゃんとみれないからな、俺。
「地理に弱いんですか……遠くに連れてったらどうなるか試してみたいです。」
「変なこと言わないでくださいよ。」
荷物をおいて一段落すると夕がコーヒーを買ってくると席を外した。
「桜井さん、もっと楽しそうにしないとだめですよ?」
「そんなに沈んで見えますか?」
「まひるちゃんのことですか?」
真実をつかれた俺はしどろもどろになってしまった。
明らかにばれた…いや美沙さんは多分知っているのだろうな。
「私は主人をなくしていますが、今でもあの人のことは愛していますよ。」
「それぐらい好きだったってことですか?」
いきなりそんなことを言うから少し戸惑ったがなんとか返答できた。
「ええ、それもありますが、楽しい思い出しかないからだと思いますよ。」
「楽しい思い出…ですか。」
「その時その時を悲しむより楽しんだ方が私はいいと思いますよ。ちょっとトイレにいってきます。」
そういってそのまま席を外した美沙さん…なんだか胸に響いた。
多分美沙さんが誰かがいなくなるという経験をしているから余計に俺に届いたんだと思う。
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