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相変わらず俺の話を真に受けるまひるちゃんには罪悪感を感じながらも笑っているのでいいか…そんな気持ちになっていた。
だからだろうか…俺はこんなにも浮かれていたからだ…なにも考えちゃいなかった。
家についてチャイムを鳴らすと出て来た親父はいつもの親父。
それこそ確実にコイツは俺の父であり一応は尊敬もしている…馬鹿だけど。
「おお、どうした急に帰ってきて。」
「用事だよ、用事…すぐ帰るから。」
「それより真一郎…なんで一人なのにバイクじゃないんだ?」
だから親父のこんな言葉は聞きたくなかった。
親父が嘘でこんなことを口にする性格ではないのだ。
いや考えればわかりそうなものだった。学校ではまひるちゃんはもうあの時の事故で死んだ…そういう風になっているのだから。
大体俺が浮かれてどうするんだ…希望が見えたわけでもないのに。
まひるちゃんに視線を移すと親父に向かってお辞儀をしていた。
あぁ俺はなんて馬鹿なんだろう…一人でくる以外の選択肢はないだろうが。
そんなまひるちゃんを抱き上げて親父に背を向けた。
「いややっぱりなんでもないわ…。」
「おかしなやつだ…ちょっと待ってなさい。」
そういって親父は家に戻って行った。
どうせ菓子でもくれるのかな。歩きだそうとすると不意に肩を捕まれた。
「待ちなさい…すぐ父さん戻るから…。」
母さんも居たのか…こんな時間だからパートのはずだが…まあいい、受け取ったらすぐに帰ろう。
「まひるちゃんごめん…もう少しだけ待ってくれるかい?」
「うん、全然大丈夫だよ。」
どうしてこの子はこんなにも悲しい出来事にさえ笑っていられるのだろうか。
俺はまたぶざまに泣き出しそうだというのに…。
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