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「これといって特別なことは書かれていないな」
ラインはカルテを読むとテーブルの上に戻した。
「こちらはどう?」
ルプレヒトがそういって差し出した書類に目を通しながらラインは尋ねた。
「国外にセドリクを逃がすための書類みたいだが…
昔は政情不安だったみたいだからその時のものみたいだな。
でもどうしてこれをオレに見せる?」
「この国の行く末が心配なんだ。
陛下はセドリク様を時期が来たら国外に出すつもりみたいだし…
ますます民衆の目には希薄にうつるんじゃないかな。
今は河川の復旧作業とか、割と地域に密着している活動をしているけど、
流動的というか、セドリク様は今のお仕事をステップのひとつみたいに考えてるふしもあるからね…」
「確かに今はあいつの夢…父親の片腕とまではいかないな。
国外へ今頃出してどうするつもりだろうか。
旅行でもさせる気か叔父上は」
ラインが疑問を口にした。
「セドリク様を後継者にするのではなくて弟のユリアン・フリードリヒ様を後継に考えておいでのようだよ」
「ユリアンを…?」
ルプレヒトが書類を渡すので、今持っている書類をテーブルの上に置いてから、紙を持った。
「ユリアンを後継者にな…」
「姉弟で帝位や王位をめぐって争わないか心配だよ」
「どうだろうな。
セドリクは父親の顔に泥を塗るのを避けているから、あまり深くは考えたことがなかったがな。
ユリアンの方は幼すぎて何とも言えないというのが正直な意見なのだが…」
いつしかルプレヒトは涙ぐんで心のうちを語ろうと口を開いた。
「いつか隠しきれなくなって、セドリク様が女性だとバレてしまう日が必ずくる…」
それにはラインは何も言えなかった。
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