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「えーっと……出口は……」
辺りを見渡す。人の波が一定の場所に向かって掃けていくから、多分そっちで合っているんだろうけど……。
上手く人の列に紛れ込み、エスカレーターで上がっていく。でもそこからが問題で、上がった途端に人の波が拡散していく。人ごみ、改札、切符売り場や広告。情報量が多すぎて、どこに向かえばどこにたどり着くのか分からなくなってくる。
「……………」
たしか改札を通った場所が……。
……思い出せない。東西南北に分かれているから余計に分からなくなってくる。
ボーっと立っていると、誰かの肩が当たってよろけてしまった。
「きゃっ…!あ、ご、ごめんなさい」
一体誰に謝っているんだろう。肩がぶつかったであろう人はどこにもいなくて、大勢の人がただただ、私の傍を通り過ぎていくだけ。
「そ、そうだ」
私は咄嗟に携帯電話を取り出す。私が今日帰ってくるコトを妹達には伝えてあって、迎えに来てくれることになっている。
だから妹に、どこの改札に向かったらいいか聞けば……!すぐさま指をスライドさせて電話帳から妹のケータイ番号を選択する。
数回のコールの後に、聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてきた。
『もしもし?』
「あ、愛華ぁ~……」
『なんでいきなり泣きそうな声になってんのさ……』
呆れた様な声の後ろから、車の音と蝉の鳴き声が聞こえてくる。きっと今こっちに向かってる途中なんだろう。
『今どこ?』
「か、改札です。でも、どこに行けばいいか分からなくなってしまって……」
『まーた迷子になってんの?……とりあえず、東側に向かって。駅員さんに聞けば多分教えてくれるから。私達も今向かってるから、駅の入り口で合流ね?』
東側出口…。電話を切った後、妹に言われた通りに目指すコトにした。
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