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「その……ありがとう…ございました。助けていただいて……」
深く頭を下げ、言葉を続ける。
「その……何かお礼、させていただけませんか?」
すると男の人は驚いたように目を丸くして両手を左右に振る。
「いいよ、そんなお礼なんて」
そう言って再び立ち去ろうとする。でも、納得のいかない私は男の人の手を取った。
「だ、駄目ですっ!命の恩人さんですから!」
「命の恩人って……。困ったな……」
ジッとその人を見ると、どこか困った様に視線を横にずらして頭をボリボリと掻く。
改めて男の人を見る。何かスポーツでもやっているのだろうか、体つきがしっかりしていて、手も大きい。こんな大きな手を握る感覚に、とある人の姿が一瞬頭を過ぎった。
瞬間、とても恥ずかしくなって思わず手を離してしまう。
「あわわ……ご、ごめんなさい!!つい…!」
「はは、君、面白い子だね」
ペコリと頭を下げて謝っていると、男の人は笑いながら私の頭を撫でてきた。またこの感じには覚えがある。
「うーん、どうしてもと言うならされなくもないけど、お礼」
「わぁっ、本当ですか?」
「でも君、誰か待ってたんじゃないの?」
……そうだった。今私は、妹達と待ち合わせをしているんだった。すっかり忘れていた。
「ねーちゃーん!!」
丁度その話をしていた時に、元気で可愛らしい声が聞こえてきた。
振り向く。そこには、数ヶ月ぶりに再会する妹の姿があった。元気に手をブンブンと振ってこっちに駆けてくる。
そしてその後ろには……。
もう1人、私の幼い頃からの幼馴染がいた。胸が一瞬キュッと締まる感じがした。少し無愛想だけど、優しくて弟みたいな………
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