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「早くしてよいっちー!」
玄関の外から、幼馴染である愛華の声が聞こえてくる。ぴょんぴょんと小柄な体をジャンプさせる姿は俺を急かしている様だった。
「ちょっと待てって、今靴履いてるから!」
負けじと俺も声を張り上げて返事をする。
靴を履いて立ち上がり、外に出る前に下駄箱に備えられている縦長の鏡で身だしなみをチェックする。
よし、オッケー。俺の中で最高のファッションだ。靴をトントンと地面で数回叩いて外に出る。ジリジリと日差しが肌を焼く様だ。
「柄にもなくかっこつけちゃって。このこのー♪」
愛華の肘が俺のわき腹にグリグリと押し付けられる。
「う、うるさいな」
歩きながら愛華の冷やかしを受け流す。と同時に恥ずかしくもある。
なんせ今日は、久々に夏ネェが帰ってくるんだからな。
「何時にこっちに着くんだ?」
「11時くらいだって。まっ、時間的に余裕あるっしょ」
スマートホンで時間を確認する愛華。
今から俺達は、愛華の姉ちゃんを駅まで迎えに行くコトになっている。今年の春に県外の大学に進学して、8月に入って夏休みになったコトから、こっちに帰省してくるらしい。
俺達にとっては4ヶ月ぶりの再会となる訳だ。
「でもまさか、姉ちゃんが大学に行くなんてねぇ……。今でも実感湧かないよ」
そうだ。実際のところ、俺も夏ネェが大学に進学してしまうなんて想像すらしていなかった。
俺や愛華の記憶では、こう言っちゃ悪いが……馬鹿の部類に入る方だった。それも、目も当てられない程の……。
そんな夏ネェが何を思ったのか、3年になってから夏ネェが『大学に行きたい』と言い出したのだ。もうその言葉を聞いた時には、熱で頭がおかしくなったんじゃないかと周りから言われていたくらいだ。
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