始まりの前日

6/7
前へ
/238ページ
次へ
その場の空気が固まる。 加治さんが苦笑を浮かべ、人差し指で頬を掻いた。 別に言い渋ることじゃない。ただなんとなく、即答する気にはなれなかった。 宮嶋さんの眉間の皺が深くなっていく。 ……ま、宮嶋さんだし。 いっか。 「同い年とは言ったけどさ」 「あぁ」 「高校には通ってない」 「……え?」 「だーかーら。俺、中卒なのよ」 宮嶋さんが驚愕の表情で俺を見つめるから、俺は後ろ頭を掻きながらの照れ笑いを返しとこう。 が、宮嶋さんから何の応答もないので、一つ咳払いをして姿勢を正す。 「んで、2週間住み込みしてる間の弁当屋を営業してない時間。無償で授業を受けてもいいって言われたんだけど、今更だし。俺もパスかなーって話をしてたんですよね、加治さん?」 「そうだよ!ほら、藤宮にとって悪い話じゃないだろ!?頼むから、行きますの一言を俺にプリーズ…」 まだ言うか。 「しつこいです」
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

548人が本棚に入れています
本棚に追加