†1章  電車にて

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 窓の外を流れる懐かしい景色を見ながら、僕は電車の中で座っている。  いつの間にか僕があの田舎町から引っ越してから3年もの月日が、そして2人で秘密基地を作ったあの日から6年がたってしまった。  ちなみに、町には3年間1度も帰っていない。  町を出た直後にあんな事が在ってから、なんやかんやと理由を付けて目を反らしてしまっていた。    でも僕は今、高校3年生になり、来年からは県外に引っ越すことになっている。  そうなれば、もう今までみたいに、いつでも帰ろうと思えば帰ることのできる距離ではなくなってしまうだろう。  もう目を反らし続けるのも限界だ。  いい加減、現実を見よう。    僕はあの町に帰ることにした。  この僕、川端 和人が『かーくん』と呼ばれ、伊藤 泉を『いーちゃん』と呼んだあの町に。     彼女との約束を果たすために。
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