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「ねぇ、かーくん。今日は何かあった?」
「特に何も。て言うかいい加減『かーくん』はやめない? 僕たちもう中3だよ?」
「…………私のことを『いーちゃん』と呼んでる人が何を言いますか」
「…………そうだっけ?」
「ばーか」
「うっせ、あーほ」
秘密基地を作ったあの日から3年が経ち、僕たちは中学3年生になった。
それでも相変わらず僕たちは毎日のように秘密基地に集まり、相変わらず2人で遊んでいた。
その理由は、単に他に遊ぶ人がいないことに尽きるだろう。
田舎だから子供が少ない上に、近所のおにーさん、おねーさんは何か知らないけど意気投合して海外に行っちゃったし。
僕たちより下は、最低でも3つも歳が離れてるし。
そして、何かにつけて『ばーか』『あーほ』と言い合う癖も相変わらずだ。
お互い悪意を籠めて言ってないって分かってるから、別に気にしないけどね。
言いながら言葉に反して目が笑ってるし。
まぁ、僕たちなりのコミュニケーションみたいなものだ。
「あっ、そういえば、かーくんは幽霊っていると思う?」
「いないじゃないかな。いーちゃんは?」
「私はいてほしいかな? だってお父さんに会ってみたいし」
「……………」
一瞬、空気が固まった気がした。
そうだった。
いーちゃんの父親は彼女が赤ん坊の頃に亡くなっていたんだった。
「なるほどな。 そういや、いっしょに遊ぶようになったのも、働いてたおばさんが迎えに来るまで僕の家にいたからだっけな。
あぁ、いっしょにご飯を食べてた頃が懐かしい懐かしい」
「いや、それは今もだからね?!」
そう。実はいーちゃんは学校帰りに毎日、彼女の家の隣にある僕の家に来てたりする。
固まった空気が和んでいくのが分かる。
「で、何でいきなり幽霊の話になったんだ?」
「ん? ほら、夏と言えば怪談じゃない?」
「…………………」
…………夏と幽霊は関係があっても、幽霊のいるかいないかの話は怪談とは言わない気がした。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「なぁ、いーちゃん。 もし幽霊がいたら、いーちゃんの今までの恥ずかしい過去がすべてお父さんにバレてるってことになるぞ?」
「はうわっ」
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