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『香織、ごめん。明日会えない』
電話の向こう、そんな雅人の声。
「またぁっ?」
私は怒る気持ちを堪えてみる。
堪えてもムカつく。
いつからかそれが当たり前のようになっていた休みの日のデートの約束。
先週もその前の祝日も。
雅人は友達優先でいきなり前日にダメと言う。
勝手だ。
勝手すぎる。
私だって最初からわかっていれば他の予定入れたのに。
前日っていうのがひどい。
『ごめんって。俺が草野球してるの知ってるだろ?かわりに月曜会う?』
「月曜から金曜まで私が仕事なの知ってるよね?」
雅人はサービス業で休みは不定期かもしれないけど。
私は普通のOL。
土曜含めてカレンダー通りの休み。
百歩譲って土曜じゃなくて日曜の夜のデートにしてやってる。
雅人もそれを踏まえて日曜は遅番入れないようにしてくれているはずなのに。
そこに草野球?
私より野球?
浮気でもしてんじゃないの?と疑う。
『じゃあ火曜。休みだしゆっくりスロでもいこうかと思っていたけど』
雅人はどこか私に譲ったように言ってくれるけど。
最初に日曜ダメって言ったのは雅人だ。
そんな譲ってやったみたいな態度を見せられてもムカつく。
「もういい。勝手にギャンブルやっとけば?」
私は雅人にイライラ。
『なんだよ、それ。こっちだって働いてんだよ』
雅人もイライラ。
それはわかってる。
お互いの予定合わせないと顔も見れない。
今は見たくもない。
結局、雅人の電話はケンカで終わった。
私は携帯に八つ当たりしてベッドに投げつけてシャワーを浴びにいく。
私と雅人は元々、地元の同級生というやつだった。
親の引っ越しで中学の頃に雅人の家の近所に引っ越して。
中学の頃に話した記憶はない。
高校も同じところに進学して。
2年で同じクラスになって友達のように話すようにはなった。
3年は別のクラスで廊下ですれ違って話すくらい。
つきあい始めたのは、高校卒業して、雅人はフリーター、私は専門にいった19才。
家はまだ一人暮らしでもなくてご近所だったから、夜に偶然会って遊んで。
なんかそんな感じでつきあった。
…もう3年も前の話。
よく続くねと友達には言われる。
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