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「……キス」
「今度は野球見に行きたい。雅人がピッチャーやってるの見たい」
「次の練習、たぶん9月から。…それよりキスしよ?」
なんでそんなにいきなりキスとかHとかばっかりに…。
私、浮気してないし、雅人のものなのに。
「…私、浮気してないよ?丹治くんのこと避けてるし。…まだ何か不安なの?」
「…おまえ、かわいいから不安。店の奴ら、おまえのことかわいい言いまくりだし。…俺だけにデレてて?」
「なにその私、ツンデレみたいな言い方」
「ツンデレだろ。誰にでも愛想のいい八方美人より、俺、そういうのが好き」
「…愛想悪くて悪かったね」
「店で愛想振り撒いただろ?笑わなくていいから。俺にだけ笑ってくれればじゅうぶんだから」
悪口じゃないのはわかってる。
でもがんばってみて、そう言われるのもムカつく。
「ツンデレじゃないっ」
「ツンデレがいいんだって。俺にだけデレるっていうのがいい。ツンツンしていて誘いづらいけど、誘ってみたらけっこういい子だったっていうのが男のツボに入るもんなんだよ。
ただおまえがたまに見せる、だらしないとことか、酒乱なとことか、平気で下着姿でうろつくとか、そういうのに男は冷める」
「……ケンカする?ケンカ売ってるよね?雅人のほうがだらしないっ!」
「細かいこと気にする男よりはそういう男のほうがいいだろっ」
「清潔感あるほうがいいっ。シャワー浴びてから寝る男のほうがいいっ。部屋片付ける男のほうがいいっ」
「寝汗かくから朝にシャワー浴びるほうが好き」
「朝も夜もシャワー浴びればいいじゃないっ」
「パジャマ着替えるとかめんどくさい」
「ほら、雅人のほうがだらしないっ!」
なんて永遠に続きそうな言い合いをしていると、いつの間にか真っ暗になっていて。
花火の音に気がつくと、眼下にあがる花火が見えた。
けっこう近くて絶景かもしれない。
ぼーっと次々あがる花火を見ていると、雅人が抱きついてきた。
「な?いい場所だろ?おまえと花火いきたかったって愚痴ったら店長が教えてくれた。…っていうか俺も初めてきたけど。いい場所」
「…花火、行きたかったの?」
「毎年恒例みたいになってて、おまえもいきたいって言ってくれたのに行けなかったから」
…なんでこんなので喜んでしまうんだろう。
…怒ったり喜んだり。
私って忙しい。
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