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東京は杉並区にある月臣小学校に黒崎 玲奈(くろさき れな)は通っている。
放課後、下校を始めた玲奈が校門を抜けると、校門の横に立っている高校生くらいの男に声をかけられた。
彼は警視庁捜査一課の黒崎 俊(くろさき しゅん)。玲奈の兄だ。
「玲奈、迎えに来たぞ」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「さっきこの辺で事件があってな。物騒だから迎えに来た」
「事件って殺人事件?」
「うん、まあ……」
「現場はどこなの?」
「こっち」
俊は歩き出した。
それに付いていく玲奈。
やって来たのは、小学校からほど近い公園の広場だ。
「被害者はここに倒れていた。死因は後頭部を殴打されたことによる脳挫傷(のうざしょう)。凶器は現場に落ちていた金属バット」
「被害者の身元は判明してるの?」
「小松 寿也(こまつ としや)、二十六歳。職業はフリーの事件記者だ」
「第一発見者は?」
「匿名での通報だったから分からない」
「交友関係は?」
「仲のいい同僚一人と、恋人が」
「その二人は何て証言してるの?」
「二人とも被害者に恨みを持つ者はいないと証言してたよ。アリバイについても訊ねてみたんだけど、二人とも犯行時刻……昨夜の十一時ごろは家にいたと言っていたよ。証明出来る人はいないけどね」
「凶器に指紋は?」
「検出はされたみたいだけど、二人のとは合致しなかったって」
「そう。恋人さんに会えないかな?」
「それならこれから行こうと思ってたから、一緒に行こうか」
「うん」
玲奈は俊と共に小松の恋人の家に向かった。
その恋人の家の表札には緑川と書かれている。
ピンポン──俊がインターホンを鳴らす。
すると中から女性が出て来た。
「どちら様ですか?」
俊が女性に警察手帳を見せる。
「警視庁の黒崎と申します。緑川 愛(みどりかわ あい)さんですね? 小松さんのことで少しお話を伺えないでしょうか?」
「はい……」
「小松さんがお亡くなりになったことはご存知ですよね?」
「ええ、さっきニュースで……」
その時、玲奈が俊の声で訊ねた。
「失礼ですけど、旦那さんは?」
「え?」
俊は玲奈を見た。
「旦那は……」
「いるんですね?」
またもや玲奈。
「いや、今のは──」
「旦那さんは何時頃帰ってきますか?」
「今日は五時には帰ってくると思います」
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