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ふたりの足音が聞こえなくなってからセレナはふう、と重い息を吐き、頭から外した白銀のティアラを、そっと台の上に置く。双眸は見て分かるまでに、悲観の色に染まっていた。
これは夢だから、触れる事はおろか、ただひとつの言葉さえ、掛けてあげられない。私にできるのは、只々見る事だけ。
「このような時、貴方なら如何されるのでしょうか。許されるのであれば、シュトルメルテの名も立場も捨てて、今すぐ貴方の許へと飛んで行きたいです、泰章さん……っ」
聞き覚えのあるその名前を、セレナは繰り返す。
石柱に額を押し付ける彼女は暫く声を押し殺し、華奢な肩を震わせていた――
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