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日の沈み静寂に包まれる中、男は歩く。
煉瓦造りの建物が空へと伸び、音も光もそして人すらも拒む路地裏を一歩、一歩。
カチリ、カチリと足を進める度に男の腕に付けられた2つのリングが音をたてる。
立ち止まりはしないが早くもなく歩み続けた後、男は後ろの物音に気づき振り替える。
「あんたこの辺じゃ見ない顔だな。」
長身の男がにやりと笑みを浮かべながら細い路地を塞ぐように片手を煉瓦の壁につき、腕輪の男の進行方向に目を向ける。
腕輪の男がその視線を辿ると更に2人の男が曲がり角からナイフを片手に現れる。
「旅人か?そのわりには丸腰だし小綺麗な格好してやがんなぁ。」
「関係ないですよ。どうせ明日の朝になっちまえば丸裸の仏さんが1つ転がってるだけっすから。」
「腕輪に耳飾り、首飾り、よく見たらそのボタンも金属じゃねぇか。」
男たちは腕輪の男を値踏みするように見ながら次々と口を開く。
「悪く思うなよ。」
長身の男がその顔に貼り付けた笑みを剥がし胸元からナイフを取り出し駆け出した。
溜め息が1つ。そして闇を纏う路地裏を照らす光。
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