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「……まあ、そんな貴方の考え一つでこの国の人間が向こう千数百年かけた理論が崩れるわけないですけどね」
「今割と本気で心が折れかけたことについて謝れこの野郎」
「嫌です。取り敢えず、ですね。そもそもの話、何故『神様』が居て、居なくなったのかを考えるべきです。それを理解してからでも、遅くないと思いますよ」
「それは俺の『願い』に関係あるのか?」
「ありませんね」
「おい」
関係ないらしかった。神様の発生論を押し付けられてどうにかなるわけではないと思ったが、やっぱりそうらしい。
「先ず、前提として知っておくべきなのは、神様という存在は……というか、それに限らずオカルト全般は、人間の想像力から生まれた存在にすぎないということです。
自発的に生まれたわけではなく、飽くまで受動態。本来は自分の意思で動くことはなく、『願い』に反応する適合装置の意味合いが強いのです。
だから現代でも、他国のそれは人格を持たないか、或いはそれが希薄につくられているわけですね。『全知全能』という無私の理由付け、というわけです。
ですが、この国、あと北欧あたりでしょうかね。
世界創世に関わった類。あの辺りは話が違ってきます。あれらは人が作った物語の枠内に当てはめられた超自然的存在なので、必然的に人に近くなる。人格も在って欲求も在って、勝手な側面もあったりする。
人に近いということは、人にかかわらないと存在できないということになります。『若者の○○離れ』じゃないですけど、忘れられても独立できる全能系と違って、関わりがないと消えてしまうわけですね。
そして、それに拍車をかけるのがまあ、貴方の『それ』です」
……ああ、つまり『信じない』ことと『関わらない』ことの徹底が、この国の『人格ある神格』との縁を切り離すに至ったと。目の前の相手はそう言いたいわけか。
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