神格願望不在論

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「で、話を最初まで戻しましょう。願い、とは言いますが。貴方はそれが神頼みで治るものだとお思いですか?」 「……思っているといったらどうする」 「まあ、とんだ過信だと笑うことも出来ましょうし、他人任せだと罵ることも出来ましょうよ。  現状からして自分主体の不幸なのに、それを解消するのに他人の、しかも不定形の何かに頼むなんて愚の骨頂ですよ。  そんな状態で、わざわざ視覚的刺激に頼るのが難しいこんな場所に来たのがありえないというか。口では希望を吐きながら、心中絶望と厭世で塗り込めたタイプが一番面倒くさいんですよ」  あーヤダヤダ、と首をふるこの相手の言葉は、実に苛立たせてくれるものだ。  何しろ、見透かされているのが気に食わない……原因も現状も自分にあるという事実が。 「自動装置の方(かた)なら、それも実現出来るでしょう。  けど、それって根本的な解決になりますか? 将来の夢とやらに視線を向けたら眩しかった。目を閉じて耳をふさいだら夢の見方がわからなくなった。そもそも、夢が何だったか忘れてしまった。  なので、元に戻りたい。……傲慢じゃないですか、それ」 「じゃあ、俺にどうしろっていうんだ、何を求めてるんだ、お前は」 「そりゃ、ねえ。自分と向き合うべきじゃないでしょうか?  人の願いなんて大体は自己実現の末に出来上がるものですから、誰かが手を出す問題ではないでしょう? 現実と向き合いたくないから、それを一足飛びに解消したい。虫が良すぎではないですかね?」
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