第1話

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      【2】 私の通う高校で不穏な噂がまことしやかに囁かれ始めたのは七月に入ったばかりの事だったと認識している。 その噂は、近づく夏の気配に浮き足立っていた私たちにそれなりのインパクトを与えた。   それでも噂は噂。 所詮はただの作り話。 平和すぎるこの穏やかな日常にほんのりスパイスを利かせた程度。 やがて噂は語られなくなり、肥大して都市伝説となることもなく、二週間で立ち消えた。 だから――私がこうして、その噂と対峙しなければ、思い出すこともなかっただろう。 七月末尾。夏休みはもうとっくに始まっている。その日は友達と学校の屋上で天体観測をしようという計画だった。
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