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午後十一時。待ち合わせ時間だ。友達はまだ来ない。スマートフォンに映るデジタルな文字盤を眺めながら溜息をこぼし、連絡帳を開いて、メールを一通送る。もちろん催促の文面だ。
そして、月でも眺めようと顔を上げた時だった――
屋上に一つの人影。月明かりが、まるでスポットライトのようにそいつを照らしている。
一瞬、友人がすでに屋上へ行っているのかと考えた。でもそれはどうやら違う。その長身なシルエットは、私の友達のものではない。辛うじてだけど、男性であることも認識できる。
その人は肩を落として、屋上の淵に佇んでいる。とても嫌な予感が脳裏をよぎって、それで私は逃げるように噂を思い出す。
落下地点に死体を残さない少年の存在を思い出す。
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