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さすがにこの時間帯、通常の玄関は閉まっているので非常階段を全速力で駆け上がる。
屋上にたどり着くには五階建て相当の階段を上らなければならない。
時間の猶予はない。
右手で額から吹き出す汗を拭いながら、左手でポケットに入っている屋上の鍵を掴む。すり減るスニーカーの底を気にすることなく、踊場でターンを何度も決める。
その先に捉えた屋上の扉は開け放たれていた。
穏やかじゃないな――そう思った。
嫌な予感というものは大抵当たってしまうものだけれど、なんというか、今私が感じているのは、悪いことが起こりそうという予感ではなくて、悪いことが起きている、という実感そのものだった。
肌で不吉を、不幸を、感じている。
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