第1話

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   残りの階段を踏みしめて、恐る恐る屋上の様子を確認する。 落下防止の為に張られるフェンスなどはなく、そこにはまっさらなコンクリートの床と、貯水タンクがあるくらいだ。 街灯の明かりが届かない代わりに、月が私を照らしている。 問題は、照らされているのが私一人ではないということで、やはりそこには少年が、たった一人で星空に臨んでいた。 どうしようもない負のオーラを纏ってである。 相手はこちらに気付いているのだろうが、気にかけるような素振りはない。下から見た時と寸分違わぬ位置で静止している。 何か喋らなくてはいけない。 このまま何もできずに彼が飛び降りてしまうのだけはごめんだ。
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