第1章 通り雨

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「--すみません」 誰もいない?電気は点いているのだけど。 梅雨にはまだ早いというのに突然の雨に降られ、 仕方なく入った1件の店。 こんなところにペットショップなんてあったんだ。 静かに眠るクロネコ、耳の長さが違うウサギ。 片側の壁にはエサや首輪が陳列されている。 入口のカゴには… 「びっくりしましたよー!いきなりふってくるんですから。 朱美さんの言った通り、傘もってってよかったです。 外の人なんて、そこらじゅうで雨宿りですよ。 そんな人たちを横目にみながら、傘をさして悠々と歩くのって気持ちいいですねぇ。 でも、どうして夕立のことがわかったんで…うわっ」 「ど、どうも」 「どなたですか」 「いえ、実は」 「あなた泥棒ですね」 「違います。一応、客です」 「いいや、そんなはずはない。僕が働き始めてからこのかた、 まともなお客さんなんて来たことがありません。 あなたの狙いは何ですか。」
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