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あれから、数日が経った。
俺は何となくあの廃墟に行かなかった。
もう自分だけのものでなくなり、何だか自分の居場所を土足で踏み荒らされた気分だった。
相変わらず温風が駆ける部屋で外をぼんやり見ていたら、
雄大
「あ、あれは・・・優子さん?」
確かに優子さんだった。
違うデザインだが、また花柄のワンピース。
何やら大きな買い物袋を両手にかかえ、歩いていた。
日差しが照り付ける中、両手に荷物をかかえ、アスファルトの上をとぼとぼ歩く姿を見て、こちらまで暑くなった。
そしてなぜが、俺は急いで家を飛び出した。
向かう先は優子さんのところ。
なぜか体が勝手に動いた。
軽く走っただけで俺は汗びっしょりだった。
雄大
「ゆっ・・・優子さん!」
優子
「・・・んー?
あ、雄大くん!」
優子さんは振り向き、笑顔で俺を呼んだ。
指先を少しだけ動かし、俺に手を振る。
雄大
「どこ行くんすか、よかったら持ちますよ。」
優子
「わー有り難い!超助かるわー」
もう敬語ですら話さなくなった彼女を横目に、俺は荷物を片方持った。
想像以上に重く、よくこんな細い腕で持てたな、と少し感心した。
いや、よく見たらそんなに細くもなかった。
雄大
「今からどこ行くんすか。」
優子
「例のひみつきちだよー。今日は結成記念にパーティーするの!」
雄大
「結成?パーティー?」
優子
「雄大くんもおいで!みんな歓迎するよ!」
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