はじまり

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鉄線をくぐり、廃墟の中に入った。 多少荒れてはいたが、昔と変わらない姿があった。 「俺は、ここ。あいつは、ここだ。で、あいつが・・・」 俺は昔を思い出しながら、椅子を並べた。 そして、1番大きい椅子を窓際に置いた。 「ここが、お前のお気に入りだったよな。」 窓から差し込む光に照らされ、彼女は一段と綺麗に写った。 俺はただその姿を見つめていることが好きだった。 好きだったのに、彼女はもういない。 誰もいない埃っぽい椅子を照らす光が、やけに虚しかった。
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