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アキラが出て行っても、
まだ歩き出すことができなくて、
その場にうずくまるようにしゃがみこんだ。
涙なんかでなくて。
ただ、震えが止まらない。
「入るよ」
との声と同時に、ガチャリと扉が開いた。
顔を上げると、案の定、ぬるま湯の彼氏。
「……結衣?どうした?」
部屋の隅にしゃがみこんだままの私を見て、
早足で駆け寄ってくる。
そして、私の体を包み込むように肩を抱いた。
その瞬間。
電流は、走らない……。
違う……。
この手じゃ、ないんだ。
抑えていた涙は一気に溢れ出した。
甘えられるのは、課長の手。
だけど違うんだ。
私の心を乱してやまない。
狂おしいほど求めてしまうのは
アキラ。
またしても、アキラに振り回されそうな予感に、頭が麻痺していくのを感じた。
やっぱり私は、
アキラを、愛してる……。
【完】
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