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プールサイドに背を預けてさらに両腕を乗せると、ちょうどいい具合に身体をプールに浮かせることができる。
この体勢はとても楽だ。そのうえ炎天下なのに気持ちいい冷たさが俺を癒してくれる。
天国のような状況を放棄して弟に水泳を教えるなんて、俺には無理だ。
「ごめんなマイブラザー、全ては俺の脆弱な精神がいけないんだ」
「わけわかんないよ……。ちょっとひとりで泳いでるから、そこにいてね」
泳ぎを教わりに――俺に教える気はあまりないが――来たはずなのだが、弟は言い残すと拙いバタ足で離れていった。
浮き輪も着用しているし、溺れるようなことはないだろう。
「はぁー……極楽、極楽」
プールの授業なんかではシャワーを浴びる時、そして入水する時に悲鳴が響き渡るものだが、この程度の水の冷たさなど慣れてしまえば快適なものだ。
冬の海とは違って、ここはアミューズメント施設なのだから。
といっても、俺はこの市民プールを満喫しているとも言えない。
そもそも夏休み中にここに来る予定などなかったのだ。もちろん、長期休暇なんて途中で予定が増えることはあるだろうが、わりと本気でここに来る気はなかった。
特に今日は。
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