霞沙羅

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「由夜、その顔は……女って奴にはもっと愛を持って優しく接しないと駄目だ、by相馬一樹」 「一樹さんみたいに複数の女性と交際している不純な人になにか言われる筋合いはありません」 生徒会室には普段とうって代わり、女性を侍らせていない一樹さんの姿があった。 生徒会副会長にはふさわしくないと思いつつも成績で鑑みれば当然だと思う自分もいる。 唯一の三年生で学年でトップの成績。 まさに天は二物を与えた代表例だ。 この前の泳ぎを見るに、体力もある。 「おいおい、俺はみんな愛している。だがお前はどうだ?会長を別に愛してないのに犬になっている。これの方が問題だ、俺はそう思うぜ」 「ちょ、ちょっと待ってください。俺は会長を愛してないといった覚えはありませんよ」 迂闊に話して、また会長になにかされるのは困る。 綾と天沢には真実は話してあるけどこれ以上は駄目だ、そう誓っているし二人にも口止めはしてあるからな。 ひょっとしたらこの人は副会長という立場だし俺の本音を聞き出そうとしている可能性すらある。 もっといえばそれを会長に報告して……そうなれば敬愛する静恵さんになにか被害が出る可能性が…。 「ん?じゃあ愛してないのか?それとも愛しているのか?」 こう直球な質問は困る。 二者択一にされてしまった。 はめられた可能性もある。 これだから頭の良い人と話すのは嫌なんだ……こういう風だと俺は常に後手に回されてしまう。 しかもこれは言わないとのちのち面倒かもしれないし。 「俺は篁麗子さんをあ、愛しているに決まってるじゃないですか」 恥ずかしくて確実に顔が赤いはず……こんなことを口にしたのは初めてだし……しかし嘘には聞こえないはずだ。 一樹さんはニヤニヤしながら指を後ろに指した。 振り向くとそこには生徒会長の姿が……あぁ、これは……だが、会長も俺の真意は理解しているはずだ。 一向に動かない……ま、まさか本気で俺に惚れたのか。 だとしたら今の俺の言ったことは。 会長は口許を抑えて出ていってしまった。 どうやら吐きにいったらしい…少しえずいてたようにも見えた。 俺のガラスのハートはぐしゃぐしゃに踏みにじられた。
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