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「そんな泣きそうな顔をしなくても平気だ、別に今ここでお前をどうこうする気はない」
ナイフが離れてると代わりにハンカチを押し当てられた。
切れた程度だけど血が出てて未だにこの事象を理解しきれてない。
「ただ我がほんの僅かでも感情が動けばなんでもできる。莫大な財力と権力はお前が思っている以上に強く、醜いぞ」
「……………」
これは明確な脅しだ。
日現実的な事にまるでついていけてない。
俺になにか価値があるとは思えないし、それこそただの一般人でおおよそ彼女のような人間と関わる可能性はゼロに等しかった。
「では本題に入ろう。我に協力しろ、別に難しいことはさせない。代わりに望む物はすべてくれてやる」
「あ、あの俺はなんかその特技とかはないですし、勉強も運動も平均値で……あの……」
「我に協力しろ。答えなんてはい、いいえ以外にはないだろう」
「はい」
会長がそんな俺の答えに満足したのか、いつも浮かべるような見下したような笑みがそこにあった。
どうしてかわからないが、殺すより使った方がいいと思ってくれたらしい。
彼女が家に来た昨日盗聴器をつけていて俺と静恵さんの会話を聞いた。
それ以外に考えられない。
話はそれで終わり、普通に家に送り届けてくれた。
協力内容は自分で考えろ、そういうことだろうか。
精神的疲れと肉体的疲れが相まって、玄関を抜けて倒れこんだ。
緊張の糸が切れたらしい。
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