人魚姫

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「何わけのわからんことさらしとんや!」 唯斗のお父さんが顔を近づけて私に怒鳴った。 「……あの時、どうやったら唯斗は助かってたかな…。」 私はそれを無視して俯きながらそう言った。 「………。」 「………。」 マスターとちなは黙っていた。 「私の声が… 私の声が唯斗に届いてたら唯斗は逃げられたかもしれない。 私の声が届かなかったから……。」 私はカッターを強く握りしめたまま泣いていた。 唯斗のお父さんもそんな私を見て口を閉じた。 「私…小さい頃から人魚姫っていう童話好きなんですよ…。 人魚は声を失う代わりに脚を得て憧れの王子様に会えるって話です。」 ちな、マスター、唯斗のお父さんの三人は顔を俯かせながら私の話を聞いていた。 「私… こんな声もういらない。 唯斗に… 聞こえなかった声い゛りません…… ゆ゛いとに届かなかっ゛たのに゛こんな声いりません゛。 その代わりに唯斗に会える脚が私には欲しい…。」 私は泣きながらそう言うと右手のカッターを腰の位置から胸の位置まで持ってきた。 「ねぇマスター…? 私と唯斗の恋物語…これ゛から… 皆が後悔しな゛いように 失恋してバーに来たお客さんに… 恋人が隣にいて当たり前だと思ってる゛お客さんに… 伝え゛てください゛…。」 途中マスターが気付いた。 「弥生ちゃん゛やめ゛ろ!!!」
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