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自分の身体が自分の身体でないように重く海の中で無力となった了は沈んで行く。
射し込む日射量はみるみるうちに少なくなり、もしも宇宙を浮遊出来たとしたのなら、こんな暗い世界が広がるのかと感じさせる。
身体を巡る酸素が少なくなり感覚の薄れた右腕に僅かな温もりを感じた。
温もりに反応して瞼を開く了。
そこには不細工な顔をして必死に右腕を掴む見慣れた金髪がいた。
金髪の少年は口ぱくで何かを了に呼びかけている。
朦朧とする意識の中、了は口の動きを読み取る。
【あきらめるな】
金髪の少年は息苦しさに耐えながら必死で呼びかけていた。
あきらめるな。と何度も
ここが地上ならば声が枯れる程。
体内の酸素を惜しむことなく何度も。
信【あきらめるな】
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