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机の上も、パソコンと、金属の破片以外は同様だ。
それだけでも充分な汚さだが、そんな部屋を、更に汚すものがあった。
それは、少年を抱きしめる男の死体の背中から吹き出した大量の血と、その傷の原因であるナイフから滴る血。
窓から差し込む月の光が、そんな床の様子をよく照らしていた。
「くそかったりぃ」
そう言いながら、男は足下に放り出されていた、兎のぬいぐるみを左手で拾い上げた。耳と顔の片側が血に染まってしまっている。
男はそのぬいぐるみを乱暴に揺すり、何かを確認するようにじっと見つめ、また揺すり、という行動を数回行った。そして、唐突に怒鳴った。
「ぅおいこの兎!! ちったあ反応しやがれ! なんだぁ!? 血に濡れてフリーズしちまったかあ?! こっちは急いでんだよ!! さっさと起きやがれ!!」
その時、少年の脳裏には、あのぬいぐるみを助けなければという考えが浮かんでいた。あのぬいぐるみは、少年にとってとても大切な家族であり、唯一の友達だ。
しかし、少年の体は、恐怖に震えるだけだった。
「バニ・・」
小さな声で言って、少年は慌てて口を塞いだ。
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