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すると、人形を、今度は激しく振り回していた男が手を止めた。そして死体に近づいて、乱暴に退かした。
支えるものの無いその体は無様にゴミ山に突っ込み、男の姿が少年に露になった。
その男は、黙っていても子供を泣かしてしまうような強面だった。それでも少年は、父親に対しての行為に腹が立った。
――殺して尚、父を傷つけるのか、と。
「くっ・・この・・!!」
「よく考えれば、簡単な事だよなあ。そうだよ。こいつを脅して喋らせればいいんだ」
しかし男は少年の意思をまるで無視して、一人言の様に言うと少年の襟首を掴んで勢いよく持ち上げた。
そして無表情のまま少年の首にナイフを突きつけた。
少年の心は簡単に折れてしまった。
「ほーら、言ってごらん。この人形に、喋れって。そしたら殺さないであげるよ」
「ひっ・・!」
情けない悲鳴が漏れる。
それはどう考えても嘘だった。両親を殺した奴が、自分だけを殺さない。そんなのは嘘に決まってる。少年は直感でそれを理解していた。
だが、ならばどうすればいいのか。
たったそれだけの答えが、少年にはわからなかった。
誰かに助けを求めることもできず、自分で友達を助ける事もできない。少年の選択肢は一瞬でゼロとなる。
不可能で満ち溢れたこの状況に、少年は希望を見いだせない。
「ほらほら、早く早く。俺は気の長い方じゃ無いからさぁ。これ、『魔法人形』なんだろう? 隠したってしらきったって無駄なんだぜー」
「っ・・とぉさ・・、・・かぁさん・・!!」
それはそんな時だった。
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