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クロードは意を決して部屋を飛び出した。すぐ隣の部屋の前に立ち、大きく息を吸った。
とたんに緊張感が増した。
顔見知り程度でしかない隣人のために、なぜこんな気持ちになっているのだろうと、ふと脱力感にも見舞われた。
しかも手紙の意図も、差出人の正体も不明だ。
だが、手紙を読んでしまった以上、無視することもできなかった。
クロードの脳裏には、ある出来事の記憶が蘇っていたからだ。
昨晩クロードは、この部屋のほうから届いたおかしな物音を聞いていた。
あのとき聞いた、あの鈍い音は、もしや――。
嫌な空想が浮かんできたため、クロードは思考を遮断した。
ゆっくりと、ドアのノブに手をかけた。
恐る恐る、慎重な手つきで手前ににそれを引いたが、すぐに予期していなかった事態に遭遇した。
「鍵がかかってる?」
今度は強く引いてみたが、やはり動かないのだ。
クロードは次いで扉をノックしてみた。しばらく待って、反応はなかった。
またノックをして、再びノブを捻ってみたが、やはり当然ながらドアが開くことはなかった。
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