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「じゃあ、代わろう」
フランは運転席を降りた。続いて、リーサのほうも助手席を降りた。
入れ代わって、運転席に着いた。
アクセルが少し遠い。リーサは座席を前に動かした。
こんなところで、ふたりの体格の違いを、不意に実感することになった。すなわちそれは、男性と女性の違いでもある。
バックミラーの角度は問題ない。リーサはシートベルトを締めた。
それからエンジンをかける。教習のときの、懐かしい感覚が蘇った。
「ようし」
リーサは、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
「安全運転で頼むぜ」
「……どうかなあ」
リーサは、特に何の気なしにいった。
フランが不思議そうな顔をして、こちらを見ているのがわかる。
「なんか……」
「ん?どうかした」
「ううん。なんでもないぜ」
おどけたようにフランは返事をした。両手を後頭部で組む体勢で、彼はどっかりとシートに深く身体を預けた。
リーサは、スピードを徐々に上げていった。
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