298人が本棚に入れています
本棚に追加
三十、五十――最終的には、サーキットを一周する間に、時速七十キロに達した。
これくらいのスピードならば、まだまだ余裕だ。コーナリングで苦労することもない。
「なかなか……いい感じだな」
フランの声は、若干の緊張感を孕んでいた。
この時、スピードはちょうど百キロに到達した。このあたりから、少しだけ身体と目が捉える感覚が変わってきた。
すなわち、より素早い判断が必要となるのだ。
「この車、まだ大丈夫だよね」
「エンジンか?大丈夫だ。無理すりゃ、百六十キロぐらいまではいけるからな」
「そんなに?」
初耳の内容だ。
「でもっ、こ、このサーキットじゃダメだぞっ?物理的に無理だ」
フランは焦った声を出した。おおよそリーサの暴走を恐れたのだろうが、さすがにそれくらいはわかっている。
リーサは、時速百キロを保ったままで走行した。
二周目の終わりに差し掛かった。
三周目――このサーキットは、最初は長い直線から始まる。
次いで右に大きく曲がるカーブがある。フランは、ここを約八十キロに落として走行していた。
でも、わたしなら――。
きっと、このスピードを保ったままでいける。気持ちに迷いはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!