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リーサは自信をハンドルに乗せ、思いきって右へ切った。
「おおいっ、大丈夫かあ」
フランは大きくのけ反っているようだ。
しかし、問題はなく、第一のカーブを突破できた。予定通りだ。
この分だと、もう少しスピードを上げられるかもしれない。
「すっげ。……やれるもんだな」
「ねえ」
前を向いたままで、フランに問いかけた。
「タイヤ。ちょっとくらいなら擦り減っちゃってもいいよね?」
しばしの沈黙がある。
「何をするつもりなんだ……」
「普通にカーブするだけなんだけど、たぶん、ちょっと滑っちゃうと思うから」
「滑る……って」
答えている暇はない。次のカーブだ。
その瞬間、緊張感が一気に込み上げてきた。
そのままの速度で突進し、リーサは左へ一気にハンドルを切った。
「うわわっ」
情けないフランの声が聞こえてきた。タイヤのスリップ音もだ。
と、同時に、ふたりの身体は右方向に思い切り引き付けられた。
シートベルトが切れてしまいそうだ。
でも、カーブはうまくいった。
車体を立て直す。
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