第3章 EPISODE Liisa

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――― 両の掌が汗ばんでいる。それだけではない、背中のほうにまでも、じっとりと嫌な感触があった。 しかし、決めた以上は逃げられない。 リーサは今一度、ハンドルを強く握り締めた。ここまでくれば、ゼファーとフランを信じるのみだ。 リーサの隣には、ゼファーと同じようなタイプの車体が並んでいる。 大会に参加しているのは、全部で十二台だ。 この中で、是が非でも一位をもぎ取らなくてはならない。 それがこの半年間、フランとともに追いかけ続けてきた夢だからだ。 いや、今日の大会を機に、その夢はついに現実になるかもしれないのだ。そのターニングポイントにもなりうる大会なのだ。 ここは夢の終わりであり、同時に始まりでもある。 リーサは決心した。そして、このサーキットの客席のどこかで応援してくれている、フランへ勝利を誓った。 このサーキットは、フランの工場のものよりずっと広く、そしてコースも長い。 前日の試験走行を経験してはいるものの、やはり簡単に不安を拭い去ることはできない。 周りの質のいい車体を見ていると、不安感が押し寄せてくるのだ。
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