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しかし、やはり今度こそは、逃げるわけにはいかないのだ。
思い返せば、ドラクロスを出たところがすべての始まりだった。
あの瞬間が、リーサの敗北の歴史の始まりだったのだ。
あの時のリーサは、ドラクロスから――そしてホープから逃げ出したのだ。
無論、それ相応の理由だったとは思う。
しかし、あの時は怜人が――ホープのみんながリーサの縦になってくれていた。にもかかわらず、リーサは国を出る決断をした。
それは、自分のためであり、かつホープの皆のための決断でもあったはずだ。
あの選択を間違いだと思ったことはないし、いまさらそう思うこともないだろう。
過去とは、変えることのできないものだ。ゆえに、逃げ出したという事実もまた、変わらない。
それを否定するということは、過去の自身を否定し、ひいては今の自分自身をも否定することになるからだ。
これはリーサの持つ哲学のようなものだった。
だから、今、やるのだ。
リーサは瞳を閉じた。フランとの半年間が蘇った。
公園でのナンパのような出会いから、ともにこの大会を目指した。
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