298人が本棚に入れています
本棚に追加
その限界を見極め続けるのが、ここからの闘いだ。
前の二台を、できるならば四周目のうちには捉えたいところだった。そしてファイナルラップは全力前進で逃げ切るのだ。
二周目は、さきほどとは対称的に、攻めの姿勢を取り続けた。
しかし前の車との距離は縮まらない。
相手も同じようなことを考えているのだから、必然的にそうなるのだ。
ならば、リーサはそれ以上の、彼らさえもが回避するような策を取り、追撃するしかない。
二周目の終わりが見えてきた。
残りは三周。うち一周はラストの逃げの一周だ。
ならば、勝負に出るのはこの三周目か、もしくは四周目だ。
さあ、どうしよう――。
しかしレースの最中に考える時間はない。
リーサは一瞬で回答を導き出した。行くなら、今だ――。
アクセルを踏む右足に、リーサは力を増幅させた。
再びスピードメーターが上昇を始めた。エンジンの回転数も同様だ。
一周目と同様、時速百四十キロを回ったところで、三周目に突入した。
これ以上踏み込むには、若干の恐怖を感じる。
しかし、このラップに限っては、失うスピードは最小限に抑えなくてはならない。
最初のコメントを投稿しよう!