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最初のカーブへは、百二十キロで進入すると決めた。
成功するか否か、リーサの感覚では、どちらともいいがたいところだ。
いや、必ず成功させないといけない――。心の支えになってくれたフランのためにも。
そして、その時はやってきた。
身体を右方向に踏ん張って、リーサはハンドルを一気に切った。
途端に衝撃がくる。身体は大丈夫でも、頭が揺れて思考が遮られる。
後輪が滑った感覚があった。しかし行くべき方向は失っていない。成功だ。
リーサはアクセルをさらに踏み込んだ。
次いでくる左右の曲線を、さきほどのイメージを頼りに乗り切る。車体が揺れて、左肩がドアにぶつかったが、痛みを感じることはなかった。
ついに中間のストレートだ。白の車体の背中が、確実に近づいているのを認識した。
捕らえるべき獲物を視界におさめ、リーサの魂にも熱が入る。
同時に右足へ力を込めたことで、エンジンは咆哮のような唸りを上げた。鼓膜を激しく振動させる爆音だ。
身体をシートに吸い付けようとするかのように、重力が身体を縛り付けた。
白い車体が徐々に大きくなる。すなわち追い詰めている証拠だ。
ただ、そこでカーブという邪魔が入った。スピードが落とす。
敵が先陣を切って突入し、すぐあとにリーサも続いた。二台の技術はほぼ同等だった。
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