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リーサは真後ろから追走した。
ここで離されるようなら、もう捕らえることは不可能だろう。踏ん張りどころだといえた。
申し訳程度の、脇役のカーブをかわし、いよいよヘアピンがやってくる。
その前に伸びる直線を、白の車体はコースの外角を狙って走っていくようだった。
おそらく、そうやって幅方向の距離を稼ぎ、グリップ走行でヘアピンを乗り切る――もしくはドリフト気味になるのを最小限に抑えようとしているのだと、リーサは推測した。
それをうまく決められれば、リーサにとっては不利になる。
かといって、素直に背中を追いかけていても掴まらない――。
ふと、リーサの脳裏にひとつの作戦が浮かんできた。
これだ――これでいこう。
無論、頭を悩ませる時間はないのだ。
敵はやはり、コースの淵を走行していた。
リーサはアクセルを踏み込んだ。ハンドルを微妙に操作し、白いマシンの右側を強襲した。
“悪魔の曲線”の直前で、ふたりのマシンが横並びになった。
驚く敵ドライバーの顔が浮かぶような気がした。
リーサは、絶妙なタイミングでサイドブレーキを操作した。
後輪が金切り声を上げながら滑走した。その車体が壁になり、敵は容易にカーブへ踏み込めないはずだ。
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