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クラッシュを辞さない究極の戦法であるといえた。
しかし、レース中はそれに後ろめたさを感じる隙さえない。
リーサは、車体が立て直った瞬間をついて加速を開始した。周辺視野で確認する限り、隣に白の車体は見えない。
そして、前方の近いところに赤のボディを捉えた。四周目に突入だ。
リーサは驀進した。後ろを振り返る必要はなかった。
敵はすでに、目の前の一台に絞られているのだから。
さらにスピードメーターを振り切らせ、ついには百四十キロを突破した。
赤い背中がぐいぐい近くなる。
最大速度ではやはりゼファーだ。
半年間、魔力を研究した成果といえた。
さきほどと同等の要領でカーブを駆け抜けた。
しかし、敵のドライブテクニックは一筋縄ではいかないようだ。ここでは、なかなか距離は縮まらない。
その差は、車体でいうなれば、約三台分というところだろうか。この絶妙な間隔が、縮まったように見えて、実際はそれほど変わっていないようなのだ。
中盤の直進に差しかかる。テクニックが相手ならば、リーサとしてはマシンの性能で攻め立てるしかない。
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