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もしかして――そこでリーサは推測した。
ここまでの四周によって、タイヤの溝が擦り減り、それによって路面に力が伝わりにくくなっているのかもしれない。
きっとそれは、普通の走行では気づかないくらいのきわめて微妙な差なのだろうが、ハイレベルなドライビングを目指すがゆえに、体感できる水準まで押し上げられてしまっているのだ。
無論、そこまでの想定はできていなかった。
ちらりとミラーを確認すると、錯覚なのか本当にそうなのか、敵の真っ赤なボディが迫ってきているように見えた。
直線で縮められていてはあとがなくなってしまう。
もう少しだけ辛抱して――お願い――。
リーサは心中で祈った。その願いに呼応するかのように、爆発音が一回鳴った。
勝利への願いを込めた気合いの踏み込みだった。
ゼファーはリーサに応えてくれている。あとは、自分自身との闘いだ。
リーサとゼファーは、直線をひたすらに驀進した。
レースは、最後の半周となる。
難所は、ラストの“悪魔の曲線”のみだ。
その前哨戦となる、緩い連続カーブ地点のひとつへ差しかかった。
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